43：下からマウント

道行く人、誰をも虜（とりこ）にするりん坊。
以前には、そのカワイさゆえに道ですれ違ったお婆さんにオヒネリ的に1000円をもらうという事件も発生している。
ちなみに、見知らぬ方からいきなり現金を渡されるという状況なので、当然こちらも初めは固持している。んが、「いいからいいから」といって譲らないお婆さんは、どんどん強引さを増していき、無理やりこちらに1000円札を押しつけてきた。
角度によっては、こちらがカツアゲしているようにも見えるその状況。天下の往来で長々と押し問答もアレなので「次回お会いした際にお返ししよう･･･」と、しかたなく一旦お預かりしたのだ。それが一回目。
そしてそれから数ヶ月後、果たしてそのお婆さんと再びばったり出会うことができた。
そして･･･、お金を戻すどころか、さらに1000円を頂く形になってしまった。
カワイさは罪。恐ろしい“地上30cmの歩く集金マシーン”りん坊。でもカワイイからすぐ恩赦。

んで、最近またりん坊に熱烈なファンが増えた。
それは、“始発オジサン”。
最寄りの駅、始発電車を待つ早朝四時半過ぎから五時前にかけて、“始発オジサン”は駅構内へのシャッターが開くのを待っている。
そこに通りすがるりん坊･･･。オジサンの足元までは近づかない。
ちょっと距離を置いてオジサンを一瞥した後には、別角度を眺めて伏せったりする。
「あ～、りんちゃん～、おはよう～」居ても立っても居られなくなって、吸い寄せられるオジサン。
りん坊は寄らない。オジサンが寄ってくるのだ。

そうよ わたしはさそり座の女（りん坊）
オジサンが充分に近づいたところで、ゴロンとお腹を見せるりん坊。捕獲されたオジサン。
「あ～、りんちゃんたら、お腹見せちゃって～。おはよう～おはよう～」
下からりん坊に捕まったオジサンは、りん坊のお腹、首元、両手足の肉球まで全身のマッサージ。
出勤前からオジサンのご奉公。気持ちよさげなりん坊。客観的に見るとナンダコレ？の状況。

りん坊がサスガなのは、毎日は行かないところ。
ちょっと数日空けたりして、オジサンの渇望をくすぐるのだ。
あぁ恐ろしいツンデレ犬。オジサンからのオヒネリも近い（かも）。