14：旅する日常

旅行が好きだ。好きだった。
わずか数年で家族と制覇した『47都道府県ツアー』の頃は、我ながら圧巻というか、猛烈な旅行モードの時期だった。また実家の両親達と行く年イチ温泉シリーズなどもかなりの数を重ねていた。

ひるがえって現在。りん坊との生活が始まって、旅行との向き合いも変わってきた。
まず、りん坊をペットホテルに預けて人間だけで旅行に行くことができるか･･･。無理無理無理無理ムリ〜！
ワンコとは別に我々はゆっくりと温泉に浸かって、豪華な部屋食に舌鼓･･･。無理無理無理絶対ムリ〜！
そのようなスタイルを全く否定するものではないし、むしろある意味そのくらいできるべきだとも思う。
会えない時間が愛も育てるだろう。だったらGOか？
いや、やはり我が家はムリだろう。家人はりん坊を心配して一睡もできない夜を過ごすのだろうし、こりゃ疲れにいくようなもんだ。まぁこちら人間側がどっぷりと”分離不安”状態だ。

では、りん坊とともに旅行に行くのはどうか･･･。これはアリだ。
実際にワンコと泊まれるホテルを訪れたことも数回ある。それはそれでヒトもワンコも気分が上がる感じもして、非常に楽しいひとときだった。またペットとの時間を大切にするべく、さまざま配慮された施設なども最近は増えているようで愛犬家たちには嬉しいことだろう。

ただ、ひとつ問題がある。自動車での移動だ。りん坊はどうやら車があまり好きではない。
特にトンネルが苦手らしく、景色が一変して”ゴー”という音が鳴り出すトンネル侵入時にその緊張度は高まる。体を強張らせて、人間の体によじ登ってくる姿を見ていると、こちらも心配で運転どころではない。

ちょっとずつ自動車にも馴れさせて、いつの日か温泉めぐりなどができると嬉しいけど、実は今はそれほど旅行を欲していない。それはなぜか？
りん坊との毎日が何だか楽しい旅のようだからだ。ノンビリとリラックスもできるし、そうかと思うと何だか非日常的な出来事や笑いもある。散歩に行けば空気も景色も変わる。毎日沢山歩けば、ゴハンだって美味しい。
リアルな旅で心が動きやすいのは確かだけど、りん坊のおかげでいつも気持ちや心が開いているのである。