REPORT

書き物:いろいろ活動報告から雑感・妄想・昔話など。

2022-12-02-FRI

#23 千手先を読むオトコ

「将棋のおもしろいところは、一旦討ち取った敵の駒をまた自分の味方として使えるところ」
ショーンさんはいう。
確かにヨーロッパのチェスはそのようなことはできないし、将棋には敵味方が入りまじりながら混沌の戦いを続けた日本の戦国時代の複雑さや予想できない物語の楽しさが反映されているのかもしれない。

ショーンさん。彼は前の会社でお世話になったスーパービジネスマン。
十人同時対局をこなす将棋名人のように、社内外の全方位たくさんの案件を並行しながら立ち回る。
普通はひとつだけでもウンザリのトラブルやら難局にこちらが頭を抱えて長考しているうちに、ショーンさんは抜群のアタマとクチの回転力で、難題だらけの詰将棋を次々と解いていく。

おそらく頭の中には『ビジネス詰将棋ドリル700選』とか『シゴトの定跡~必勝穴熊戦法』てな感じのノウハウがインプットされているのだろう。いつの間にか向き合っていた相手が自分の味方になったり、一旦譲ってから取り返したり、詰むや詰まざるやのピンチを紙一重でくぐり抜けたり、一気呵成の光速の寄せをしてみたり、とまさに兵法の達人!
「いや~、そろそろもう疲れた」と明るくこぼしながらも、根っからの勝負師はいつも切った張ったのやり取りを楽しんでいるようだ。

さらにホント凄いなぁと感心するのは、問題解決の詰将棋的な瞬発力だけでなく、その“大局観”。
多くの修羅場をくぐりぬけ、複雑な局面判断を多く経験したなかで身につけたであろう《視座の高さ》は、低姿勢のコミュニケーションとは対極的。でもモノゴトの序盤から先を読むその力は、センスもさることながら、勉強熱心さにあらわれている努力の賜物だろう。
「自分自身を裏切らない努力の姿勢が、未来の結果として現れてくる」、あの羽生善治さんは言ったそうだ。努力を続けたショーンさんは段位をかさね、81マスを超える大きな組織でますます大きな役割を果たしている。

あ、「ショーン」さんって言ってもそれはビジネス名で、ホントは日本人の「しんいち」さん。
― そう、まるで“歩”がひっくりかえって、“と金”になった感じ。