REPORT

書き物:いろいろ活動報告から雑感・妄想・昔話など。

2022-10-06-THU

#20 夢と魔法の犬将軍

すべてのヒトは、法の下において平等 ― と憲法ではうたっているが、残念ながら&当然ながらオフィスビルの下においては全てが平等というワケにはいかない。

ダンさん。
前職でご一緒だった“行列のできる何でも相談所”の主任相談員。何かトラブルがあったらダンさんの元へ。トラブルがこじれる前に彼女に相談に行けば、もっと傷口は浅くて済むし「来るのが遅い」と怒られずにもすむのだけど・・・。まあ何はともあれ、イイ感じでトラブルが煮詰まってきたところで、その大きさと反比例させるような仔犬の風情でトコトコとダンさんのデスクに向かうのだ。

ハードワークのダンさんは、たいていフロアで一番夜遅くまで残って業務をこなしている。
PCに向かい、ショパンの『子犬のワルツ』くらい早くて軽やかに、毎秒10タイピングくらいの超絶技巧の仕事ぶりが深夜まで ― まぁ仕事を増やしていたのはこちらなので申し訳ない限り。粗相の後始末をしてくれている飼い主をじっと下から見つめるワンコの気持ち。

御主人様の仕事を邪魔してはいけないので「よし!」が来るまで忠犬たちはデスク横で「待て」をキープ。
「どーしました?(よし!)」を号令に相談が始まるのだが、そこからボクらは人間の不平等さを知ることになる。「あー、こんなにアタマの切れるヒトが同じ生き物なのか」と。

こちらの相談事をあっという間に理解すると、問題解決のためのリーガルポイントやら交渉アプローチを、時速80キロで走るグレイハウンドくらいの速さで説明してくれるダンさん。そのスマートさと論回しのスピードについていけないのは、まさに馬の耳に念仏、犬に論語。そういえば、自分は戌年だった!ナルホド、小型犬並みの脳ミソなので仕方がない。・・・ホントにヒトって不平等。

ともあれ、こちらを周回遅れにしつつ、ボストンテリアのように白黒つける切れ味の鋭さは、さすがの弁護士。そしてそれだけでなく、一番ダンさんのスゴイところは、清濁併せのみつつ、関係者や交渉相手みんなが納得できる落としどころまで導いてくれるところ。利害が相反していたはずのステークホルダーまでもが、気付いたらダンさんが用意したドッグランで仲良くじゃれ合っているのだ。これぞ犬将軍の大岡裁き!夢と魔法の国の多頭飼育トレーナー!

今ではフラフラ気まぐれの野良犬モードになった自分だけど、十年にわたって忠実な?会社のイヌとして、ここ掘れワンワンと頑張ってこられたのは、愛犬家ダンさんの温かい動物愛護精神と保護活動のおかげなのである。