REPORT
書き物:いろいろ活動報告から雑感・妄想・昔話など。
2023-04-01-SAT
35 :ベランダ
そういえば以前は〈ホタル族〉という言葉があったけど、煙の出ない電子タバコが一般的になってきた最近でも彼らは生息しているのだろうか?
ホタル族 ― それはベランダに出てタバコを一服する人たち。喫煙者だった昔が懐かしい・・・。
りん坊も最近はベランダが大好きだ。
毎晩のように「そろそろ外の時間だよ」と、リビングの窓際にトコトコと歩いていき、こちらを呼ぶようにじっと見つめるのだ。それは人間たちが夕食を食べ終わってから夜10時くらいまでの時間。
りん坊の足元にひざまずくと、「来るのが遅いよ」といった感じで、ピョンとひざ上に飛び乗ってくる。
りん坊をかかえて外へ。
我が家のベランダからのビューは、遠くのほうに東京タワーや高層ビル群、そして方向をかえると観覧車やら、夢の国の花火やら。首都高を走る車やトラックは途切れることがない。また、空港の離発着ルートに近いらしく、上を見上げると飛行機もひっきりなしに飛んでいる。線路沿いの我が家からは、数分おきに行き来する電車も眺めることができる。
動くもの、明滅するもの、ずっと灯されているもの ― 夜の東京は光が渋滞している。いや、それは光で呼吸しているようでもあり、脈を打っているようでもある。 TOKIOがふたりを抱いたまま TOKIOが空を飛ぶ
「東京って、キラキラしているけど、せわしないねぇ」と、りん坊はつぶらな瞳を開いて神妙な様子。
かの町田康先生は、猫の泰然たる佇まいを「(人間が)どうでもいいようなことで悲しんだり怒ったりしているとき、彼女(猫)らはいつも洗練されたやりかたで、人生にはもっと重要なことがあることを教えてくれた」と記している。
腕の中のりん坊もそんなことを考えているかのように、ベランダから拡がる慌ただしい俗世のパノラマ ―〈煌々と輝く東京ホタル〉を目を細めて眺めている。ヒトは過剰な発光の代償に、何を差し出しているだろう。
ボンヤリ考えつつ4~5分したところで「じゃあ部屋に戻ろう」と、こちらの鼻をペロっとなめるのが、終了の合図。
ワンコ師匠との修行は今宵も続く。