REPORT

書き物:いろいろ活動報告から雑感・妄想・昔話など。

2022-08-11-THU

20:一粒食べ

お米一粒に七人の神様。
毎度の食事の時には、たくさんの神さま、生産者、料理をしてくれたヒトに感謝しながら「いただきます」があるべき態度だ。

朝晩は“ささみ”が主食のりん坊だが、オヤツや夜食として、ドライのドッグフードも食べている。
小腹が空いたりん坊は、プレーリードッグのように立ち上がり「おい、分かってるだろ」と右の前足で家人を突っつくのだ。「リョーカイリョーカイ」と小皿にドッグフードをザラザラっと20〜30粒入れて、りん坊の前に差し出す。

・・・食べない。
りん坊は伏せてジーっと小皿を見つめる。しばらくすると伏せの体勢のまま、右前足で床を叩きリズムを取り始める。儀式が始まるのだ。

頃合いを見て、小皿から一粒を差し置く家人。りん坊は右足でそのドッグフードの周辺をトントンと叩き出す。決して粒には触れずに。
粒を中心にまわりを転がり踊りだすりん坊。決して粒には触れない。粒を中心に足でリズムを取りながら引っくり返ったり、小さくワンと言ったり軽くワチャワチャの舞を続けるりん坊。叩けボンゴ 響けサンバ 踊れ南のカルナバル 踊ろうセニョリータ! ― そう、それは食事における感謝の祭りなのだ。

ひとしきり神に捧げる舞を終えると、初めの一粒を咥えて祭りの中心から離れるりん坊。ちょっと離れた布団の上などで、一粒を口に入れては出し、出しては入れを繰り返し、ようやくその後にポリポリと咀嚼音が聞こえてくる。一粒を供してからそこまで数分。それはりん坊の一連の「いただきます」の祭りであり、儀式なのだ。信心深いワンコだこと。

二粒目以降もがっつくことはない育ちの良いりん坊。その後は「寿司屋のカウンタープレイ」が始まる。
まぁこっちも基本はグルグル回るお寿司屋さんにしか行ったことがないので、あくまで妄想プレイだけど。
「大将、そうだな今日は白身から握ってくれないか」
「ヘイ、かしこまりました」
食通の常連客に一貫ずつ握り寿司を差し出すように、こちらから1〜2粒ずつ目の前に置いていく。
一粒ずつ噛み締めながら味わうりん坊。バリボリと一網打尽にドッグフードを食べることは決してしない。
品の良い上客に対して、こちらも職人気質の口数の少ない大将として、良きタイミングで次の粒を無言で差し出すのだ。

ひとしきり寿司プレイを20往復くらいすると、りん坊は満足して店を後にしてどこかに消えていく。
祭りの後の〆の寿司屋に長居はしない ― 江戸っ子か!?