11：路上寝

温かくなってきた！
冬場はウェアを着せてもブルブル体を震わせている寒がりのりん坊だけど、お得意の季節がいよいよ到来。
陽のあたる時間が長くなり気温の上昇にも合わせるように、散歩の距離や時間もどんどん伸びていく。

んが、最近りん坊におかしなクセがついてきた。

路上で寝るのだ。
この危険極まりない弱肉強食の東京コンクリートジャングルで、ひっくり返って寝るのだ。いったい野生はどこに消えたのか？
ちなみにそれは、家人も同行する時より、自分がひとりでついていく散歩時が多い。
散歩の道中、調子よくトコトコ歩いていたのに急に止まって “お座り”の体勢をしてこちらをチラ見。
従順なほうの部下がついているのを確認して、“伏せ”に移行。再度こちらをチラ見。
ヨシ、引き続き何でも言うことをきくほうの下僕が同行している。
そしていよいよ仰向けにひっくり返って、見つめあったまま招き猫のように前足を動かして、「いつものところをさすれ～」と指示を出すのだ。

NOと言えない日本人、歩く安請け合い、ましてやご依頼元はりん坊、ということで、便利屋としては当然リクエストにお応えして、前足の付け根やらお腹まわりをコチョコチョとさすりはじめる。
するとうっとり目をつむって、時に涙目になりながら、恍惚の表情を浮かべゆっくりとした呼吸を始めるのだ。路上で。天下の往来で。

ポカポカ日向のアスファルトの上が気持ち良いらしく、かつ少しだけ風が吹いているくらいがベストコンディション。多いときは一回の散歩で３回、「さすれ～」とリクエストが飛んでくる。
「はっ、またっスか」とこちらはなるべく道の端っこのほうにポジションしながら、陛下が心ゆくまでおさすり申し上げるのだ。

まぁこれはこれで散歩中のひとつのお約束として悪くないヒトコマなのだが、事情を知らない道行くヒトはギョッとする。ひっくり返り動かないワンコ、横にしゃがんでじっと見つめながら胸のあたりをさすっているオジサン。見ようによっては、ワンコとオジサンのW主演版『世界の中心で愛を叫ぶ』。

瞳をとじて 君をさするよ それだけでいい

そんな状況なので、「何事か！？」と遠くからかけよってくるヒト、一旦通り過ぎてから二度見・三度見するヒト、道向こうで心配そうに立ち止まって見つめるヒト・・・。
平和な日本と人々の優しさを噛みしめるうららかな陽ざしの下、なのであった。